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工作機械・工具・産業機械/モノづくりの現場支える―デジタルツイン加工機登場
モノづくりの根幹を担っている機械と工具。生産性や省エネルギー性といった性能を高めるのはもちろん、「安全・安心」も製品の付加価値を向上するキーワードのひとつになっている。セキュリティー面を強化したり、工場内の環境に配慮したりした製品の投入が相次ぐ。こうした技術の開発をもとに、製造業を支えている愛知県の機械関連産業の動きを追った。
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強固なセキュリティー機能を施し、サイバー攻撃からモノづくり現場を守る「OSP-P500」
オークマは2023年から、コンピューター数値制御(CNC)装置「OSP」シリーズの最新型「OSP-P500」を自社の工作機械に搭載を始めた。OSPの1号機が1963年に誕生してからちょうど60年。前身機の「同P300」から10ぶりにフルモデルチェンジしたこの次世代CNCには、モノづくりの現場が抱える課題に対するオークマ流の解決策の数々を新機能として盛り込んでいる。
例えば、加工時間の見積もりを実加工時間の1000分の1、誤差1%以下の高速・高精度で可能にする「デジタルツイン」。現場における加工スケジュールの策定や、迅速で正確な納期とコスト見積もりに貢献する。
また、加工動作作成から段取り、加工、検査まで、一連の作業を一つの画面で、ガイドに従いながら図面情報の入力をするだけで加工準備ができる。プログラムの技術に乏しい初心者でも使えるようにして、熟練技能者の不足の悩みの解消を図っている。
そして、製造業でも顕在化してきたサイバー攻撃への被害を抑えるため、強固なセキュリティー対策を施した。不要なアクセスや接続を防いだり、作業者や通信の識別・認証機能、ウイルス対策、データの改ざん防止・異常検知機能などを搭載。工場のサーバーと工作機械のCNCがネットワークでつながり、情報漏えいのリスクが高まっている現場に安全・安心を提供する。
ネジ転造機の製造販売を手がける三明製作所(愛知県春日井市、谷口光雄社長)も、技能者不足への対応を進めている。
同社の転造機のオプション機能として、経験による勘やこつが必要だった作業を支援するシステム「サンメイ・ナビゲーション・システム」を開発した。
ピッチ合わせや段取り作業をセンサーなどで数値化。作業を効率化し、段取り時間の短縮を実現する。連続稼働時間も可視化でき、定期的な部品交換や点検も可能となる。
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広範囲のワークに対応する豊和工業の新型楔型3爪中空チャック「H037MAシリーズ」
また、工作機械向けの機器として、豊和工業が旋盤用油圧パワーチャックの新製品「H037MAシリーズ」を開発した。くさび型の3爪中空チャックで、くさび角の変更により従来品の把握力を保ちつつ爪ストロークと貫通穴を拡大して、より広範囲の加工対象物(ワーク)に対応させた。11月にチャック外径が6インチ、8インチのサイズを先行して発売。その後、10インチ、12インチのサイズを順次販売開始する。
6インチは61キロニュートン、8インチが95キロニュートンの高い把握力を持ち、高回転の重切削に対応。チャックの締め付け位置を変更し、ボディー歪みを最小化した。把握精度は0・01ミリメートル以下で、爪の浮き上がりは従来品比20%低減した。高剛性化と摺動効率改善により、回転数と耐久性も向上させている。
高強度医療チタンドリルも
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母材にチタン合金を使用し、医療用に使えるようにしたオー・ケー・シーの工具
工具では安全・安心な暮らしに不可欠な医療分野に対する新製品が登場した。医療用工具で母材にもチタン合金を使用した高硬度チタンドリルビット「エキューマ・ティーアイ」をオー・ケー・シー(名古屋市中川区、大河内昌彦社長)が開発している。
チタンは生体適合性は高いが、強度に課題があった。新製品は表面処理によりステンレスと同等の強度を確保。同社が大阪産業技術研究所(大阪府和泉市)と共同開発した特殊な熱処理で、ステンレス製工具と同等の耐摩耗性を実現した。チタン合金製であるため、アレルギー反応や施術中の破損などに対するリスク軽減のほか、錆びにくく軽い特性も持つ。
研削と研磨機能一体化
環境に配慮した革新的な工具も誕生している。OSGは塑性変形によってネジ山を作る工具の盛り上げタップについて、従来の形状を一新し、新しいメカニズムで加工する「グリーン・タップ」を開発。24年内に発売する予定だ。
従来より長寿命化するとともに、新たなタップ製造法の採用によって生産時の二酸化炭素(CO2)排出量を半減できる。グリーン・タップは一般的な盛り上げタップにある直線状の溝がない特殊な形状をしている。これを穴に押し当てることで、従来の盛り上げタップとは異なるメカニズムでネジ山を形成する。
EV行程効率化に貢献
一方、電気自動車(EV)の拡大の流れを見据え、EVの生産を効率化できる工具の開発に注力するのはノリタケカンパニーリミテドだ。
EVはバッテリーの電力を高効率で動力に変えることが欠かせない。加えて、高級車に求められる静粛性能が大衆車でも必要となるため、研磨の需要が高まる。そこで同社は研削と研磨機能を一体化した「複層タイプ」の歯車用砥石(といし)の開発に着手した。
一般的に使用する研削のみの単層タイプは後工程として別の砥石で研磨する。それに対し複層タイプは設備を1台に集約したり、加工の精度を高めたりできる。
現在、自動車関連の企業と実証を重ねる段階で、24年度に実用化し、本格的な販売活動を始める計画だ。
